最新の近視治療について
近視になると、遠くの文字がみえづらくなり眼鏡やコンタクトレンズを使用しないと、学校の授業や生活に支障をきたしてしまいます。近視がある人、特に近視の強い人は近視をできることなら治したい、そう思っている人も多くいるのではないでしょうか?今回は、今まで多く行われてきた近視の治療法から最新の治療法についてまで、簡単に説明していきます。
そもそも近視とは?
では近視とはそもそもどういった状態なのでしょうか?
近視とは、少し専門的にいうと、遠方から目に入ってきた光が網膜より手前でピントを結ぶ状態のことです。
人は網膜にピントが合っている時に鮮明に物を見ることができます。近視が強い人ほど、網膜よりも離れた位置(かなり手前の位置)にピントを結んでしまっているため、よりピンボケの状態になるのです。
原因としては、眼球の奥行きが長くなっているために近視になる軸性(じくせい)近視、角膜(黒目)や水晶体の光を曲げる力が強いために起こる屈折性(くっせつせい)近視があります。
眼鏡やコンタクトレンズを使用してはっきり物が見えるようになるのは、網膜よりも手前に結んだピントの位置を、レンズ(凹レンズ)により網膜の位置に近づけることができるためなのです。
近視の治療その1 視力回復トレーニング
近視の治療で、すぐに思いつくのが視力回復トレーニングだと思います。視力回復トレーニングは、テレビや動画サイト、スマホのアプリなどを利用して簡単に始めることができます。
例えば、目の筋肉を動かすストレッチを行う方法、目のツボをマッサージする方法、ゲームにより目の焦点を合わせる訓練を行う方法などさまざまな方法があります。しかし、どの方法も強度の近視が完全に治ることは難しく、また日々継続していかなければ効果が持続しないものもあるため、根本的な治療としては難しいといえます。まだ近視の始まったばかりの人や、簡単に始めたいと思っている人にはおすすめの近視治療といえます。
視力回復トレーニングのメリット
- 比較的に簡単に始めることができる
- 高額な費用がかかることは少ない(視力回復センターは除く)
視力回復トレーニングのデメリット
- 近視(特に強度)を根本的に治すことは難しい
- 継続し続けないと効果が持続しない
近視の治療その2 LASIK(レーシック)
近視の治療の方法として、LASIK(レーシック)と呼ばれる近視子矯正手術を選択することもできます。LASIKは1990年代に登場して以来、またたく間に広がっていった近視矯正の方法です。
LASIKでは、マイクロケラトームという専用の器械でフラップ(角膜の表面を薄く切ってフタをつくるようなイメージ)を作製します。フラップをめくった後、術前の検査で得られた正確なデータを元に、エキシマレーザーを照射して角膜を削っていきます。最後にまたフラップを閉じるという流れです。このフラップをいかに綺麗な状態で作製できるかが手術のポイントで、現在ではマイクロケラトームにかわりフェムトセカンドレーザーを用いてより安定したフラップを作製することが可能となりました。
LASIKで角膜を削ることにより、なぜ近視を減らすことができるのかを説明します。角膜には光を曲げる屈折力(くっせつりょく)と呼ばれる力があります。この屈折力を角膜を削ることにより調整することができるのです。近視の人は、網膜よりも手前にピントを結ぶ状態であると説明しましたが、角膜の屈折力を減らすことによりピントを網膜に近づけてあげることができるのです。
LASIKの適応は、18歳以上であること、強すぎる近視がないこと(削ることのできる角膜の量が定められているため)、緑内障や円錐角膜といった眼疾患や膠原病などの全身疾患がないこと、妊娠中でないこと、また医師の説明を十分に理解できることといった条件があります。
LASIKには、近視の強かった人ほど術後に近視の戻る可能性があること、トラブルがあっても削った角膜は元に戻せないこと、グレアやハローといった夜間の見え方に違和感があること等のデメリットもあります。
LASIKの費用は行う施設や術式によっても異なりますが、両眼で10~25万円程度が相場です。あまり高額な費用を使わずにすぐに近視を治療したい人にLASIKはおすすめです。
レーシックのメリット
- 手術後すぐに視力が向上する
- ある程度の近視でも、精密な計算によって手術が行われるため近視を治療できる
- 費用も特別高額ではない
レーシックのデメリット
- 強すぎる近視については手術の適応にならない
- 何かトラブルがあっても削った角膜は元に戻すことができない
- 術後に近視の戻る可能性がある
- 夜間の見え方に違和感があり、慣れるまでに時間がかかる
近視の治療その3 オルソケラトロジー
近視治療にはオルソケラトロジーという方法もあります。オルソケラトロジーとは、特殊なコンタクトレンズを夜寝ている間に装着して、角膜のカーブにクセをつけて日中は裸眼で生活する視力回復の方法です。
夜間に装着するコンタクトレンズはソフトではなくハードなので、硬い特質を利用し角膜を平らにすることによって、屈折力を低下させます。朝にコンタクトレンズを外して、日中は裸眼で過ごすことができます。オルソケラトロジーは、手術以外の方法で確実に近視を治すことのできる唯一の方法といえます。
オルソケラトロジーのデメリットは、度の強すぎる近視には適応がないこと、目に合ったコンタクトレンズを決定するまでに時間がかかり費用も高額であること、コンタクトアレルギーやドライアイでコンタクトレンズの装着ができない人にはできないことがあります。
オルソケラトロジーは、特殊なコンタクトレンズを作製するのに高額な費用が必要で、おおよそ20万円くらいかかります。
オルソケラトロジーのメリット
- 手術以外の方法で確実に近視を減らすことができる
- 年齢が若くでも行うことができる
オルソケラトロジーのデメリット
- 夜毎日コンタクトレンズを装着しなければならないため、手間がかかる
- コンタクトレンズの装着をやめると元に戻るため、根本的に治るわけではない
- アレルギーやドライアイが強ければ、適応外になる
- 費用も高額である
近視の治療その4 フェイキックIOL
近年、近視治療の1つとして登場したのが、フェイキックIOL(有水晶体眼内レンズ)です。
フェイキックIOLにより、LESIKとは違った方法で近視を治療することが可能となりました。フェイキックIOLとは、前房または後房(角膜と水晶体の間)に眼内レンズと呼ばれる特殊なレンズを入れる手術です。このフェイキックIOLの最大の利点は、LESIKのように角膜を削る必要がないために、近視の度数が非常に強くても手術の適応があることです。また角膜を削る必要がないために、術後の見え方に違和感を感じにくいことも特徴です。さらに、万が一の時には挿入した眼内レンズを取り出すこともできます。
フェイキックIOL手術のデメリットは、行っている施設がまだ少ないことと、費用が非常に高額になることです。
フェイキックIOLの相場は、両眼で60~80万円程度です。近視の度数が非常に強い人でお金にも余裕があれば、このフェイキックIOL手術がおすすめです。
フェイキックIOLのメリット
- 強い近視でも治すことができる
- 見え方の質が良く、術後に違和感を感じることが少ない
- 万が一の時に取り出すことも可能
フェイキックIOLのデメリット
- 行っている施設が少ない
- 費用が近視治療の中で最も高額である
近視の治療その5 白内障手術
この近視治療は少しこれまでと違い、水晶体が濁る白内障という病気がある人限定になります。特殊な場合を除いて、白内障は高齢者に多い病気です。白内障の治療は濁った水晶体を手術で砕いて吸い出し、そのかわりに人工の眼内レンズを入れる治療法になります。この眼内レンズに近視を矯正する度数を組み込むことにより、近視を治療することができます。
この白内障治療で近視を治すことの最大のメリットは、健康保険が使えることです。そのため、3割負担の人では、検査代を含めても50000円程度で行うことができます。さらに高額療養費制度を利用すれば、両眼同じ月に行うことによりもう少し費用をおさえることもできます。
白内障手術で近視を治療するデメリットは、白内障がないと適応がないこと、水晶体を取り出してしまうため、近視を治すことはできても近くは見えづらいことです。ただし、お金に余裕があれば遠近両用の眼内レンズを入れることもできます。この場合は自費診療になるため、両眼だと100万円程度の費用が必要になります。遠近両用の眼内レンズは保険適応にはなりませんが、施設によっては先進医療が適応されるところもあります。自分の入っている医療保険からお金がでるようであれば、選択してみるのも良いと思います。
白内障手術のメリット
- 近視治療もできる上に、健康保険も使用できる
- 自費診療にはなるが、遠近両用の眼内レンズを入れることも可能である
- 白内障の手術は多くの眼科で行っているため、遠方まで行かなくても手術を受けられる可能性が高い
白内障手術のデメリット
- 白内障がなければ、治療の適応とならない
- 水晶体を取り出すため、近視を治すことができても近くは見えづらくなる
- 術後、しばらくは洗顔、洗髪ができない等の制限がある
まとめ
以上、近視治療について簡単にまとめてみました。今回紹介した近視治療には、それぞれメリット・デメリットがあります。近視治療を考える上では、適応年齢や費用など、それぞれの特徴を理解して自分がどの治療を選択すべきかを良く考えてみて下さい。
また、自分がどの近視治療を選ぶべきか迷っている人は、最寄りの眼科で相談してみてはいかがでしょうか?眼科であれば、近視の度数や目の状態に応じて適切なアドバイスをしてもらえると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。